伊師君 (博士課程1年) の地球周辺の電荷交換X線発光に関する観測論文が PASJ に掲載されました。近年、日本のX線天文衛星「すざく」などの活躍によって、太陽風に含まれる重イオンと地球から流出した希薄な大気が作る外圏の電荷交換反応に伴う突発的なX線発光の存在が分かってきました。伊師君は「すざく」衛星の公開データを用いたX線発光の系統探査を進める中、今回新たに太陽風の主成分であるプロトンより遅れて発光する奇妙なイベントを発見し、X線の時間変動がアルファ粒子と良く相関していることを突き止め、これは高速太陽風 (コロナ質量放出: CME) が作る惑星間衝撃波で前方のプロトンが圧縮され、その後 CME 本体が遅れて到来するためであることを明らかにしました。従来見過ごされていた可能性のあるX線発光イベントであり、その他のX線観測の雑音だけでなく、太陽風構造を知る手段としても期待できます。詳細は下記の論文をご覧ください。

PASJ: https://doi.org/10.1093/pasj/psy142
arXiV: https://arxiv.org/abs/1902.07652

今回「すざく」衛星で観測されたX線発光のエネルギースペクトル。
電荷交換反応に伴う C から Si まで様々な高階電離輝線が見られる。