銀河、銀河団
銀河団は、銀河が数100個ほど集合した宇宙最大規模の構造体で、可視光で見るとよくわかりませんが、X線でみると、1億度を超す高温ガスの塊を付随していて、明るく輝いて見えます。このガスの存在を精密に調べる事で、銀河団と一緒に存在している暗黒物質の謎に迫ることができます。
下の図は、ペルセウス銀河団を可視光でみた写真(左)と、X線の写真(右)です。
銀河団の構成要素である銀河や銀河間ガスについても研究しています。どのように星や銀河、銀河団が進化して今の大規模構造が出来上がったのか、宇宙の進化の全容を解明するには、たくさんの謎を解明していく必要があります。近年では、中心にある超巨大なブラックホールが、銀河や銀河団と相互作用していることがわかってきて、ブラックホールと銀河や銀河団の相互作用の研究にも注目されています。
惑星、地球、系外惑星
1996年の百武彗星を皮切りに、さまざまな太陽系の天体からX線が観測されてきました。放射の元となっているのは、希薄な大気と太陽風の電荷交換反応、加速電子からの制動放射や逆コンプトン散乱、荷電粒子の衝突に伴う輝線放射など様々です。こうしたX線は太陽系環境を知る新しい手段として注目されており、続々見つかっている系外惑星の環境の理解や、宇宙天気にも紐付けられるため、科学的興味を超えた価値を持つようになってきています。
たとえば惑星大気にはまだまだ謎が多いのですが、金星には二酸化炭素の厚い大気があるのに、火星にはほとんど大気がありません。カリストなど木星の衛星には大気がないのですが,土星の衛星タイタンには窒素大気があります。このような惑星大気の多様性や進化を調べる上で、「電荷交換」によるX線放射が役立つと考えてます。
こうした研究はX線天文衛星や太陽系探査衛星のデータを使用しており、理論研究者と共同でスパコンを用いたシミュレーションも行って比較しています。さらに海外の系外惑星の探査衛星データを用いた系外惑星そのものの研究も行っています。
ブラックホール、中性子星、白色矮星などの高密度星
ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論に基づき20世紀前半に理論的に予言され、強大な重力のために光さえその中から脱出できない天体と考えられています。20世紀後半のX線天文学の創始により、ブラックホールには、大質量星が死ぬときの大爆発で作られる太陽質量の10倍程度の軽いものと、銀河の中心に存在する太陽質量の約100万倍の重たいものがあることが分かってきました。
どのようなエネルギー解放がおきて物質がブラックホールに落ち込むのか分かっていませんし、宇宙ジェットとよばれる噴水のような現象により物質が遥か遠くまでものすごい勢いで噴出されることもあるのですが、そのメカニズムもわかっていません。X線を使うと、ブラックホール近傍の現現象を調べたり、輝線や吸収線からガスの運動を調べる事ができます。
中性星や白色矮星は、星が一生を終えた時の爆縮により、ブラックホールには至らないものの、かなり密度の高い状態になっている星です。このような高密度星では、身の回りの原子がそのままの形ではいられないほど潰された状態になり、奇妙で不思議な物理現象が様々おこることが知られています。X線を使うと、奇妙な現象を少しずつですが解き明かすことができます。